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人「元帝國陸軍航空隊整備兵 ― この叔父のことを書いておかなくては」


戦後まもなく、昭和27~8年頃、東京、三軒茶屋に向かう東急世田谷線沿いの道。
緩やかだが長く続く坂道を電車と並走するバス。
バスの運転手は左手の軌道を走る路面電車型の車両を一瞥すると、アクセルを踏み込んだ。
電車との距離が開く。「今日は勝った」と思ったその時、電車のモーターが意外な底力を見せて、
ついにはバスを抜き去っていった。
その夜、この運転手は車庫でエンジンの調整に励んでいた。
「こんどは負けないぞ」という思いを胸に。
この、バスの運転手が私の叔父だ。

この話はずいぶん前によく聞かされた。この人が、なぜこれほどまでにこの勝負にこだわるのか、
それは単に、気性、性格の問題だと思っていた。
マイカーも、中古車を乗り継ぎ、自分の手でチューンアップしていたのは、バスの運転手で
エンジンの整備に長けているからだと思っていた。

3年前、久しぶりにこの人の家を訪れた時。
きっかけは何だったか忘れたが、話題が彼の経歴に及んで、初めて、叔父が旧陸軍の航空整備兵で
あったことを知った。
無類の航空機マニアである私の親類縁者にこんな経歴の持ち主がいようとは。
電車との競争は単なる勝負ではなく、その目的は、自分が整備したエンジンの力を確かめる事に
あったのだ。
もちろん、かなり負けん気の強い性格ではあるのだが。

その後、かなり断片的ながら、
陸軍の主力戦闘機であった、隼、鐘馗、飛燕、疾風などのエンジンや機銃などの武装、機体の整備に
携わっていたことを聞いた。
この叔父が、航空雑誌やプラモデルでしか知らない憧れの戦闘機にその手で触れていたなんて。
もっとも、これはオタクの羨ましがり方で、興味の無い人には何のことやら、だと思うが。
さらに、終戦間近、連日来襲する米軍艦載機の機銃掃射に追われに追われたこと。
戦争が終わっても、米軍がテスト用として持ち帰る日本の戦闘機を整備するため、三ヵ月も故郷に
帰れなかったこと。
戦後、叔父が愛してやまない航空機の世界に戻ろうとしたが、英語の壁にはばまれ、かなわなかった
こと。
そして、83歳の現在に至るまでの、とても明るくて、面白い苦労話の数々を、ハリのある声音、
楽しい語り口調で話してくれた。
栃木なまりに横浜弁がミックスされているので、いささか聴き取りには苦労したが。

1式隼縮小
■一式戦 隼 海軍の零戦と比較され、小さくて武装も貧弱で脆弱
 と評されるが、ちゃんと爆撃機も撃墜している。最初から防弾装
 鋼、防弾ガラス、防漏型の燃料タンクが装備されていて、太平洋
 戦争全期にわたって生産された優秀機。
 (開発・生産 中島飛行機―スバルの富士重工がその流れを汲む)

2式鐘馗縮小
■二式戦 鐘馗 1500馬力の大きなエンジンを搭載。
 時速600㌔以上のスピードと優れた上昇力を持つ迎撃戦闘機。
 一撃離脱の空戦スタイルは米軍の戦法と同じ。
 戦国武将のごとき格闘戦にこだわる古参パイロットには不評であ
 ったが、その性能は戦後の米軍による評価テストでは、最高位に
 位置づけられている。(開発・生産 中島飛行機)

3式飛燕縮小
■三式戦 飛燕 ベンツの水冷(液冷)エンジンをライセンス生産して
 搭載。機体は優秀だったが、当時の日本の工業力ではこのエンジン
 を 安定的に供給することができず、整備も難しかったためトラブ
 ルが多かった。叔父は、不時着した飛燕を出張修理したことがある
 という。戦争末期には、空冷エンジンに換装した五式戦が登場して
 いる。(開発・生産 川崎航空機―現在の川崎重工業)

4式疾風縮小
■四式戦 疾風 2000馬力級エンジンを搭載し、時速700㌔/h近い
 スピードで日本の戦闘機中最速を誇る。
 米軍のテストでは、高高度性能も含め、日本の最優秀戦闘機とさ
 れている。(開発・生産 中島飛行機)

先日、娘夫婦を伴って、結婚の報告を兼ね叔父の家を訪れた。
この時もまた、叔父は自ら作った見事な出来栄えの隼やら疾風やらのプラモデルを手に、
往時の話をいろいろしてくれた。
1/72の小さなプラモデル「隼」には細かな陸軍機の迷彩が描かれていた。
これを、齢八十を過ぎた人が作ったのかと、驚きを禁じ得なかった。

後日、娘からメールが来て、娘婿がプラモデルをはじめると言い出したとあった。
83歳の老人の話や生き様が30歳の若者に少しばかり刺激を与えたのかも知れない。
トレンド情報だけが刺激ではないのだ。

日曜の午後、私はせっせと宅急便の段ボールにプラモデルを詰め込んでいる。
こののち一生かけても完成させることはできないであろう、おびただしい数の飛行機プラモの
ストックの中から、初心者でもつくれそうな機種を選りすぐって。


飛行機プラモの王道は1/72や1/48かと思うが、住宅事情が許せば、
  さらには奥さんとの折り合いがついているのであれば、1/32モデルは
  作り応えもあり、迫力満点だ。


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プロフィール

テッペン爺

Author:テッペン爺
昭和22年(1947年)
京都に生まれ、
芦屋に育ち、大阪を経て
現在は芦屋に在住。
身長178㎝ 体重75㎏
販促企画のプランナーとして
適度に活躍(?)して33年。
現在に至る。

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